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数論入門

私が関わったハーディ・ライトの数論入門の第6版の翻訳(数論入門I数論入門II)が2022年4月に出版された。第6版からの変更点はシルバーマンによる楕円曲線の章(第25章)の追加と章末の註釈の拡充、索引の追加が主である。作業には思いの他時間がかかったが、出版まで漕ぎ着けることができた。定価で購入できる状態が長く続くことを願っている。
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2018

18年賀状m

2017年12月はチュニジアで開催された研究集会 Geometric and Harmonic Analysis on Homogeneous Spaces and Applications に参加・講演してきた。年次進行は年度単位なので、2017年度3月まで年度末進行で色々忙しいが、2018年初にあたり気持ちを新たに取り組んでいきたい。

Maple で困ったこと

関西学院大学理工学部数理科学科では、数学ソフトウエア Maple を用いた数式処理演習 I, II という授業を開講している。毎年 Maple のバージョンが変わり、数年に一度コンピューターがリプレイスされると、前年まで実行できていた内容がうまく動かなくなることがしばしば起こり、悩まされている。バージョンアップによる機能拡張の恩恵を受けることはほとんどないが、変更により不利益を受けることは多々ある。

今学期の問題点の主なものは以下の通り(Maple 18):
animate と animatecurve のフレーム数が一致しない形に変更されたので、フレーム数を指定しなければいけなくなった。これは妥当な仕様変更の範囲かも知れないが、display コマンドで複数のアニメーションを同時に表示すると、図形が切れてしまう。表示範囲を指定すれば解決するが、以前のバージョンではこういう不具合はなく、display コマンドで表示する各オブジェクトの xy 座標の範囲をカバーするのは当然のことで、バグといえる変更である。

Math モードで ) と ( を続けて入力すると勝手に ) と ( の間にスペースが挿入される。Maple の Math モードでは Mathematica を真似たのか、スペースを空けると掛け算を意味するようになっているのだが、Maple 18 から勝手にスペースが挿入される仕様になって、従来のコードが、いちいち手動でスペースを削除しないと正常に動かなくなった。 ) と ( が続くケースは間に掛け算 * が入る場合以外ないと Maple の開発者が判断しての変更だと思うが、本当にそうなのか。

Maple や Mathematica のような高額な商用ソフトウエアの開発・販売を維持するのも大変だろうと思うし、頑張って欲しいとは思うが、自分が個人ユーザーなら保守料を払ってバージョンアップの危険を冒す気にはならないし、サイトライセンスを持っている教育機関のユーザーとしても、古い安定バージョンで数年間固定して運用するなどの対応を考えないとやってられないというのが正直な印象である。学生に対して、コンピューターを使うことのメリットを強調したいのに、このような事態を現場で招いて学生に否定的な印象を与えかねない事態を招いているのは、勿論、私の準備不足が原因であり、よきにつけ悪しきにつけ OS やソフトウエアのバージョンアップによる変化はあるのだから、トラブルが起こらないよう事前にテストして教材をアップデートしていかなければいけないのである。

Maple の奇妙な仕様

今年度も関西学院大学理工学部数理科学科の2年生向けにMapleを用いた演習を担当している。

Maple の入力形式には「テキスト」と「数学 (2D Math)」の2種類があるのだが、授業ではデフォルトの「数学」を用いている。掛け算を表す * の入力を忘れる学生が多く毎年苦労する。 * を省略してもエラーは出ず、(1) 省略しても Maple が正しく理解してくれる場合 (2) 省略すると違う結果になる場合がある。

(1) のケースは、たとえば 2x と入力するとMapleは 2 と x の積と理解してくれる。(2) のケースは、たとえば x(1-x) と入力すると Maple は後ろの (1-x) を無視して、x として理解する。たとえば、plot(x(1-x),x=0..1); を実行すると、2次関数のグラフではなく、直線が描かれる。

上のような経験をすると、掛け算の * をつけないといけないということが学生たちに身につかず、毎年困惑している。長年に渡ってずっとこうなので、我々の立場では不具合だが、製造元の立場では仕様だろうからどうしょうもない。研究で使う際にも気をつけなければならない。

Microsoft Office

関西学院大学理工学部数理科学科では来週金曜日に卒業研究発表会を控えて、卒業研究も最終段階である。卒業研究要旨集の原稿と卒業研究発表のスライドの2つが要だが、それらをどう作成するかは長年の問題であった。要旨については以前は LaTeX を使っていたし、その場合スライドは LaTeX の slide か近年では beamer を使っていた。一方、LaTeX を教える余裕がない年は Microsoft Word と Powerpoint を使っていた。

今年度の卒業研究の要旨は Microsoft Word を用いて作成し、発表は Microsoft Powerpoint を使って行う。現在 Office のバージョンは 2016、その前は 2013、ところが、研究室の PC を見てみると、Office のバージョンは 2010、Office が入っていない PC もある状態だった。発表本番でおかしなことになると困るので、Office 2010 のパワーポイントで作成したファイルを Office 2013 で開いてみたが、特段問題ないようだ。

Microsoft Word は使いにくい、数式が汚いという印象で敬遠してきたが、よくなっているという話もある。今年度の学生たちには Office 2010 ではなく Office 2013 を使ってもらうべきだっだかと反省している。バージョンアップするとどの程度使い勝手がよくなるか把握していないのだが、大学で Microsoft のライセンスを持っているので、私自身が研究室の数台のパソコンに一々インストールする手間を惜しまなければ、バージョンアップしない理由はない。

LaTeX を中途半端に教えると無茶苦茶なソースでエラー出まくりでろくなことがないので、一時 LyX を使うことも考えたが、Microsoft のソフトウエアのライセンスを大学で取得しており、社会で Microsoft Office が広く普及している、数式入力・表示も改善されている(らしい)現状では、卒業研究では、Microsoft Office を使うのが無難という、以前と違う考えに落ち着きつつある。論文の分量や研究期間が卒業研究より長期にわたる修士論文で Microsoft Office と LaTeX のどちらが優位なツールかという評価はこれからまた考えてみたい。
プロフィール

示野信一

Author:示野信一
関西学院大学理工学部数理科学科
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